現在取組んでいる研究内容
リーガルリテラシーを育む「消費者市民教育としての道徳教育」の研究を行っています。学校教育全体、「道徳」「家庭科」「社会科」等の教科横断学習、道徳科の時間等の「道徳教育」を通して、リーガルリテラシーを身につけた消費者市民の育成をめざしています。具体的には、韓国・オーストラリア・シンガポール・ドイツにおける小・中学校の倫理・道徳教育や消費者教育の内容から示唆を得て、道徳教育のカリキュラムや教材開発に取り組んでいます。
これまでの主な科研研究
1) 「消費文化に対する子どもの関わり方の実態とリスク―消費者教育の教材開発―」
基盤研究(C)(一般)(平成23~25年度)
子どもの消費文化とリスク対応に関して,韓国の関係機関へのヒアリング調査及び韓国の小学生・中学生・大学生を対象にアンケート調査を実施し,子どもが直面するリスクと課題を明らかにした。さらにこれらの研究成果を基に子どもに必要な消費生活能力を整理し,消費者教育の教材『インターネットで広がる消費文化』を開発した。
2) 「消費行動と生活情報に関する領域別意識調査と達成度別教材作成に関する研究」
基盤研究(C)(一般)(平成23~25年度)
大学生を対象に消費行動と生活情報に関する領域別意識と実態を調査し、その結果に基づき食生活(鍋ゲーム)、衣生活(洋服買物すごろく)、住生活(ダイヤモンドランキング)教材を作成し、その教材評価を行った。
3) 「リーガルリテラシーを育む消費者市民教育―教員養成課程で活用できる教材開発―」
基盤研究(C)(一般)(平成25~28年度)
消費者市民に必要なリーガルリテラシーの概念整理を行い、リーガルリテラシーを育む新しい消費者市民教育を提案した。さらに教員養成課程の大学で活用できる教材『リーガルリテラシーを育む消費者市民教育』を開発し,大学の授業で試行した。
4) 「消費者市民社会における倫理的消費者―消費文化をキー概念にした教材の開発と評価―」
基盤研究(C)(一般)(平成26~28年度)
消費文化をキー概念にして消費者市民社会における倫理的消費者育成を目指した教材の開発を目指したものである。研究成果は、国際家政学会・アジア家政学会等で報告すると共に、海外研究者との交流を深め、倫理的消費者概念を整理した。
5) 「リーガルリテラシーを育む消費者市民教育としての「道徳」カリキュラムの開発」
基盤研究(C)(一般)(平成29~31年度)
海外の学校教育調査や関係者へのヒアリング調査を行い、消費者市民教育としての「道徳」カリキュラムを検討し、小・中学生に実践した。道徳・倫理・社会的正義の判断によって意思決定し、社会の一員として協働し、社会参画できる実践力を備えた消費者市民の育成は、これからの日本の学校教育の重要な教育課題である。
6)「コンシューマー・リーガルリテラシーを育む学校教育カリキュラムの開発」
基盤研究(C)(一般)(令和2~6年度)
小学生への質問紙調査を通して、消費者としての倫理観や消費行動の実態を分析し、日本の子どもたちの消費行動の課題を明らかにした。
7)「教員と子ども双方のウェルビーイングを実現する学校教育カリキュラムの開発」
基盤研究(C)(一般)(令和7~10年度)
国内外の先行取り組み事例などを参考にしながら、アントレプレナーシップ教育をベースにした学校カリキュラムの実態を把握し、教員や子どものウェルビーイングを向上させる要因の特定や課題を抽出した上で、学校教育カリキュラムの内容や方法、評価を提案する予定である。
その他の共同研究
1) 「法教育としての消費者教育」
消費者教育・法教育共同研究事業 近畿司法書士会連合会(平成22年度~24年度)
司法書士及び附属学校教員(家庭科・社会科)と連携協力の下、「法教育としての消費者教育」を中心テーマとし、中学・高校生を対象とした教材開発及び授業案の作成に取り組んだ。家庭科と社会科の教員を対象に消費者教育の取り組みの状況を把握するためのアンケート調査を実施した。さらに家庭科と社会科の授業プランを考案し、実践・検討した。
2) 「予防教育としての消費者市民教育―リーガルリテラシーを育む教員養成カリキュラムの検討―」
大阪教育大学 教育研究活性化推進経費(平成24年度)
日本より取り組みの進んでいる韓国にて、法律や制度によって子どもたちの被害を低減している事例を収集し、消費者市民教育の課題を整理した。
3) 「グローバル化と家庭科」のテーマ研究 日本家庭科教育学会課題研究(平成26年~28年度)
文献調査から、グローバル社会に対応した高等学校家庭科のカリキュラム開発の視点を提案し、保育、家族、衣生活などの領域におけるカリキュラム開発や授業実践、カンファレンスを行った。その成果を国際家政学会、日本家庭科教育学会で発表した。
4) 「小・中学生の多様なキャリア開発に向けて-「ジェンダー意識と家庭生活観の調査」を基にした授業研究-」大阪教育大学男女共同参画推進事業(平成30年度)
子どもたちのジェンダー意識や家庭生活観の実態を把握した上で授業を構想できる教員の育成を目指すため、附属学校教員と連携してアンケート調査を実施した。その結果をふまえて授業を開発し、実践した。
5) 「SDGsを目指す家庭科教員養成に関する調査・実証検証」日本家庭科教育学会第5期課題研究(令和2年度~4年度)
SDGsに関する大学の指導事例や、小中高の実践事例を調査した。その結果を家庭科教育学会で発表し、学会誌に資料として掲載された。
6)「エージェンシーを育む消費者市民教育~ウェルビーイングの実現を目指して~」日本消費者教育学会関西支部プロジェクト研究(令和4年度~6年度)
2030年を見据えた未来の消費生活を展望して、これからの消費者市民教育としての法教育はどうあるべきかを議論し、未成年者に不可欠な消費者リテラシーの内容とその実践方法を提案した。